先日、友人と「AIの進化で私たちの価値はどう変わるのか」という話をしていました。ふと昔の図書館の風景が頭に浮かびました。
かつて文字を読めない人が多かった時代、図書館には一人のお年寄りがいました。彼は本の内容を子どもたちに語り聞かせる役目を担っていました。子どもたちは彼の周りに集まり、目を輝かせて話に聞き入っていたのです。
しかし、識字率が上がるにつれ、人々は自分で本を読めるようになりました。もはや「情報を伝える役目」だけでは、誰も彼のもとに集まらなくなったでしょう。
でも、もし彼が単なる「情報の伝達者」ではなく、「面白い語り手」だったら?
物語に抑揚をつけ、時に自分の体験を交え、思いもよらない視点で話を展開できる人だったら?きっと人々は今でも彼の周りに集まっていたはずです。
これは、まさに私たちが直面している状況なのではないでしょうか。
AIが発達し、正確な情報や知識は誰でも瞬時に手に入る時代。私たちが「単なる情報の伝達者」なら、人はわざわざ会話する必要はなく「AIに聞けばいい」となるでしょう。その先に待っているのは、皮肉にも「情報過多の中の孤独」です。
一方で、「面白い人」には今後もますます人が集まるようになると思います。では「面白い」とは何でしょうか?
それは、知識と経験をもとに予想外の点と点を結び付ける能力ではないでしょうか。ラーメンの話から海外旅行の思い出へ。『ワンピース』の話からアレキサンドリア図書館の歴史へ。思いもよらない展開で会話を広げられる人が「面白い人」なのだと思います。
このスキルの源泉は「知識」と「経験」です。特に経験は強力です。AIがどれだけ南極の情報を提供しても、実際に南極を冒険した人の語りには敵いません。
でも現実は厳しい。仕事に追われ、コスパとタイパばかりが気になり、経験に投資する余裕がない…
だからこそ、読書なのです。
読書は最強の疑似体験ツールです。他者の経験を自分のものとして吸収できる、人類最古のバーチャルリアリティと言えるでしょう。
AIに結論だけを聞いたり、切り抜き動画で満足するのではなく、じっくりと学び、夢を描き、静かな夜に物思いを馳せる時間の大切さ。それこそが今、最も必要とされている「人間らしさ」なのかもしれません。
サクセスコンパスでは、皆さんの知的好奇心をくすぐる本を次々と出版していきます。AIとの共存時代だからこそ、人間の可能性を広げる「知識と経験の扉」を開いていきたいと思います。
物語はまだ始まったばかり。この旅を共にしましょう。